最近では各メーカー、燃料電池を搭載した自動車の公道試験を相次いて始めました。
そこで、今回はSAE(Society of Automotive Engineers: アメリカの自動車技術会)ジャーナル3月号から抜粋し、海外における燃料電池自動車の最近の動向についてまとめてご紹介したいと思います。
−燃料電池の歴史
まずはこの燃料電池、歴史は以外に古く、1894年にイギリスのウィリアム卿によって初めて作り出されました。そして約40年前、アメリカ・NASAのジェミニ・宇宙計画でGE(ゼネラル・エレクトリック)社が本格的な燃料電池を試作し、1980年代にはアメリカ・ロスアラモス国立研究所では更なる高性能化が行われました。その後、1993年に、カナダのバラード・パワーシステムズ社が試作した燃料電池を搭載したバスが世界初の燃料電池自動車であるようです。このカナダのバラード社が現在、車載用燃料電池のリーディングカンパニーとなってます。
−燃料電池の原理
ご存知の方も多いので、ここでは簡単に紹介します。
燃料電池は、水素と酸素(空気)を反応させて電力を得るものですが、燃料として水素をそのまま用いる場合、水以外の物質は排出されない特徴を持ってます。
このため、燃料電池自動車は、高効率、利便性、環境性を兼ね備えた次世代自動車と考えられています。
燃料電池にはいろいろな種類がありますが、固体高分子電解質型燃料電池(PEFCまたはPEM:Proton Exchange Membrane)は、出力密度(装置の単位体積当たりの出力)が大きく、80℃程度という低温動作が可能であります。このため、自動車用の燃料電池としては、主としてPEMが開発対象となっています。
燃料電池の燃料として水素を用いる場合、圧縮して高圧水素ガスとする方法、冷却して液体水素とする方法、水素吸蔵合金に蓄積する方法などがあります。また水素の代わりにメタノール、ガソリン等の炭化水素を車内で水素に改質する方法があり、この場合は改質装置が新たに必要となります。
−燃料電池のコスト
現在の小型乗用車に匹敵する出力を得るためには60kW〜90kW(80馬力〜120馬力)の電力が必要となります。40年前にNASAが宇宙向けに開発した燃料電池は1kW当たり50万ドル(6千万円)でしたが、現在は1kW当たり500ドル(6万円)まで下がっています。しかし平均的な燃料電池エンジンのコストは25000ドルと、内燃エンジン(3500ドル)と比べてもまだ高いのが現状のようです。しかし燃料電池とそのシステムのさらなる改良を行うことにより、年間30万台生産すれば1kW当たり50ドル〜60ドルまでコストを下げることができるだろうと予測しています。
−海外自動車メーカーの燃料電池自動車
ダイムラー・クライスラー:
ベンツAクラスをベースとした「NECAR5」とジープをベースとした「Commander2」の2台を発表。
出力は90kW(Commander2)、燃料(メタノール?)満タンで480〜600kmの走行が可能、加速は0→97km/hが12秒、最高時速は145km。
ゼネラル・モータース:
オペル・ザフィラをベースとした「HydroGen1」を発表。
出力は56kW、燃料(液体水素?)満タンで400kmの走行が可能、加速は0→97km/hが16秒、最高時速は135km。
フォード:
フォーカスをベースとした「FCV」を発表。
出力は80kW、燃料(液体水素?)満タンで160kmの走行が可能。
フォルクス・ワーゲン:
パサート?をベースとした「Bora HyMotion」を発表。
出力は75kW、燃料(液体水素?)満タンで355kmの走行が可能、加速は0→97km/hが12.5秒、最高時速は145km。
どの自動車メーカーも2004年の市場投入へ向けてしのぎを削ってます。これらの性能を見ると、実用化まであと一歩のところまで来ているようです。実用化されれば私たちの生活スタイルにも影響を与えることは確実です。新しい技術、時代へ向けて、私たちも準備しなければいけませんね。