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アメリカ自動車コラム
<No.204_080914> 題目:トヨタが社員価格で店頭販売する日
アメリカでは、ゼネラル・モータース(GM)が「社員価格」で新車を販売するキャンペーンを行ってます。原油価格の高騰で、主力の大型車やSUVが売れなくなったこともありますが、それだけではなく、もっと根が深く、今のアメリカの状況が、将来の日本にも起こりうる可能性をもってます。 今回は私が肌で感じたアメリカの自動車産業の状況をレポートしたいと思います。
GM・クライスラー技術者の流出 私は現在、南部のノースカロライナ州で携帯電話の設計をしてますが、職場にもGMやクライスラーからの転職組が随分と増えてます。 彼らは中西部のミシガン州に家族や家を構えている場合が多く、家族とは週末や休暇を取って、飛行機で帰って会ってます。ジョブ・サーチを見ても、アメリカ国内の自動車関係の採用は少なくなっており、自動車関係の技術者の流出で、自動車以外の技術系の採用も難関となってる気がします。
アジアメーカーの成長 ノースカロライナ州は、以前は綿花などが特産品で、紡績関係の工場や機械メーカーがありましたが、現在では、価格競争力のある、中国などのアジアメーカーに市場を奪われ、ノースカロライナ州だけでも紡績関係で1万人が職を失ったと言われています。携帯電話やコンピュータといった電子機器の生産も、ほとんどアジアで生産されているといっても過言ではありません。 最近では、スキルの高いアジアの技術者が多くなり、設計機能はアメリカにあっても、設計込みで生産をアジアに依頼したり、アジア人技術者が、長期出張でアメリカに来て、設計のオンサイト・サポートをしたりなど、開発プロセス自体の空洞化が加速しているように見えます。 北米でクルマが売れなくなってきた理由は、原油価格の高騰だけではなく、これまで購買力のあった中流階層が、産業構造の変化から職を失い、購買力を失ったことも大きな要因ではないのでしょうか。
トヨタが社員価格で売る日はどんな日? ゼネラル・モータースは、独自に燃料電池システムを開発し、かつゼネラル・モータースもEV1という高性能な電気自動車を世にだしており、技術力があるにもかかわらず、現在のような状況に陥りました。 中国やインドといった巨大なアジア市場が成長し、現地生産が進むということは、現地での設計開発も進むということで、スキルの高い技術者がアジアに増え、中国やインドの会社が急速に力をつけていき、技術と品質、コストともに、トップメーカーに迫る勢いになり、トップメーカーも逆にアジアを多用するため、中流階層が職を失い、これが急速にアメリカ経済が減速した要因の一つのように見えます。 日本はアメリカほど大きな国ではないので、日本国内で中流階層が職を失うと、逆に中国などのアジアへ職を求めて移り住む人が増える日が来るかもしれません。 そんな日が、トヨタが社員価格でクルマを売り、インドや中国の自動車メーカーにトップを奪われる日になるのでしょうか。 |