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アメリカ自動車コラム

<No.58_020323> 題目:内燃エンジンと燃料電池との関係

今回は大学の講義についてご紹介したいと思います。

現在、大学は春学期(1月〜5月)で、3月の最終週にある一週間だけの春休みまでは、中間試験に追われることになります。この私も今学期は4クラスを取っていて、昨日までは馬のように走らされる毎日を過ごしてました〜 でも今はつかの間の春休み。ちょっとだけリフレッシュさせてもらいます。

さて、今学期の取っているクラスの一つに化学動力学?(Chemical Kinetics)という、私が尊敬しているF教授が主宰するクラスがあります。それはエンジン燃焼を化学反応レベルで解析する学問です。

近年研究されている低公害エンジンのための燃焼は、炎が青かったり、人間の目では見えなかったりするほど反応で、それは燃焼というよりは化学反応という表現のほうが適切なのではないのでしょうか?

排出ガスもさらにクリーンになってきたため、逆に燃焼反応と排気ガスの計測が非常に難しくなってきています。私の研究はこの排気ガスをより正確に計測して、エンジン燃焼の理解と制御に役立てようというものなのですが...その話をすると長くなるのでまたの機会にでも。

そんで、この化学動力学なるもので低公害エンジンのための燃焼(HCCI燃焼と呼ばれるものなど)を解析すると、燃料の種類にも寄りますが仮定をある程度単純化した場合、それほど複雑な計算をすることなく排ガス成分を見積もることができます。

結局、エンジンの燃焼の反応は空気と燃料だけになりますからね。

考え方をもっと単純化すると、内燃エンジンとは、燃料と空気の化学反応によって得られる体積膨張を、ピストン・クランクなどの機械的機構によって、走行するエネルギーに変換するものということになりますよね?

では、燃料電池の場合、同じように当てはめると、水素などの燃料と、空気の中にある酸素を電極を介して化学反応させ電気を発生し、その電気エネルギーを電動モータによって、走行するエネルギーに変換するものということになりませんか?

両者は、化学反応とタイヤの回転との間に存在するエネルギー変換機構、すなわち、ピストンやクランク、または電極やモータ、に違いがあるものの、燃料と空気が化学反応するという原理は同じで、排気ガス成分と、そこから取り出せるエネルギー量の概略は、化学動力学を使うと見積もることができるのです。

現在の世間は、「燃料電池」がクリーンで、「内燃エンジン」は汚いと決め付けている風潮のようですが、そうではなく、この化学動力学をあてはめれば、「内燃エンジン」と「燃料電池」は、結局、同じところに行き着くのではないでしょうか?

私は、どっちが「きれい」で、どっちが「きたない」という区別を付けるのは、まだ時期が尚早のような気がしています。

「内燃エンジン」の研究者には、まだまだがんばってもらいたいものです。

 

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